2011年07月22日

忘れられない〔4〕

「戦争でお父さんが兵隊に行ってる間
私は3人の子供を守らないと…。
子供にもしもの事があったらお父さんに申し訳ないといつも思っていた。」
今日はその「Mさん」にとって忘れられない戦争中の出来事を話します。

農家に嫁いだ「Mさん」はとても働き者です。
畑や田んぼの仕事に隣組の仕事に、病気のお舅さんのお世話もしていた。
加えて小さい3人の子供の母として朝から晩まで働いていた。
頼りにしたいお父さんは兵隊に行っていない。
お国の為に頑張っている。
ある日、いつものように子供達を家に置いて畑に行った。
家族に食べさせるイモや野菜を採るために。
畑にいたら突然空襲警報が鳴って
みるみる敵の戦闘機が迫ってきた。
バババババッ!
と機関銃の音がした!
自分のすぐそばでバババババッ!と弾が飛んできた
低い空からあきらかに「人間」を狙って撃ってきている。
畑に出て農作業をしている人に向かって撃ってきている。
バババババッ!
そこらじゅうで土煙が舞っている。
こんなとこでじっとしゃがんでたら
撃たれてしまう!
私がここで死んだら子供と爺さんの世話は誰がする…!
ここで死んだら兵隊に行ってるお父さんに申し訳ない…!
とっさに
私は頭にかぶってたミノ傘をほどいて
思いっきり遠くに投げた。
(敵は上からこのミノ傘を狙って撃っている!)
そして私は傘の飛んでった方とは反対側に走って逃げた。

何度もその話しを繰り返す「Mさん」
だんだん
その場にいない私が
「Mさん」になってゆく…
冷静に判断して
機関銃の恐怖に負けることなく機敏に逃げて
穴ぼこに身を隠し、B29が通り過ぎるのを待った。

…思いっきり遠くに投げ飛ばしたミノ傘を狙って敵は撃つ…

あれから60年…。
畑仕事で鍛えた丈夫な足腰が「Mさん」の自慢です。
とても小さな体ですが
「痛いとこ…?ないよ。どっこもイタないよ……」



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Posted by よっといでん  at 18:50 │忘れられない体験談



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