2011年07月18日

忘れられない〔1〕

いつもの昼食後の何気ない談話にて〜
利用者「Kさん」が語ったある出来事がとても印象的だったのでここに要約いたします。

終戦間際の満州
そこで私は一生忘れられない光景を見た
直接自分には関係のない事ではあったが
それが記憶からはがれない
それは、引き上げ者の群集の中
私のすぐ隣りに
女性と軍人さんぽい男性がいた
ふたりは夫婦か恋人のようにしっかり寄り添っていた
そこにボロボロの格好をした男の子が肩で息をしながらあらわれて
「おかあちゃ-ん!、おかあちゃんをボク、ずっとさがしていたよ…。
ボクと一緒にいて…。
ボクも一緒におかあちゃんについていきたい…」
と泣きじゃくりながら母親に訴えたのだ
当時の私はまだ女学生であったが
それでも男の子と母親、そして軍人さんの関係は理解できた
ああ…この子は出て行った母親を必死に探して
やっとみつけて
ギリギリまでおいつめられてここに来たんだ…
この子はおかあちゃんが大好きで離れたくないんだ…
ここで離れたらもう二度とおかあちゃんには会えないんだ
すぐそばにいた私は胸がぎゅんと熱くなり
母親の動向を
待った……
母親なら我が子を涙流して抱きしめるだろう…
子供のためにもそうあってほしいと…
なのに
私が見た母親は
母親は…男の子を
突き放した……

今頃になって、
その男の子がどうなったのか
とても気になって仕方がない
家に帰ったんだろうか…
その後の男の子の記憶はない
今、私のできることは…
男の子のあの時の勇気とその後の幸せを
「祈る」ということ……

  

Posted by よっといでん  at 21:19忘れられない体験談